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宗次ホール・オフィシャル・ブログ

「クラシック音楽を通じて人と街をやさしくしたい!」クラシック音楽の宗次ホール(名古屋・栄)です♪

コンサートを影で支える「譜めくリスト」って凄い!

Categoryコンサートの様子 スタッフの視点から
3月10日のアルトゥール・ピサロさんのリサイタルでは
ピアノリサイタルとしては珍しく、楽譜を見ながらの演奏でした。

楽譜を見ながら・・・ということで有名なのは、往年の巨匠、スヴャトスラフ・リヒテルでしょう。
晩年は短い小品でも敢えて楽譜を見ながら演奏するスタイルをとりました。
ご覧の通り・・・。(youtubeへ)
「楽譜を見るか見ないかが問題ではなく、出てくる音楽が問題だ。」
「記憶力の良し悪しがピアニストの良し悪しではない。」
といった言葉が残っています。

しかし、譜面を見ながら演奏すれば、
両手はふさがるので、当然楽譜は誰がめくるんだという話になります。
ピアノとほかの楽器のデュオ等の室内楽なら尚更、逆に楽譜を置いて弾くのが当たり前です。
最近はipadを置いて、足でクリックできるようにして次へめくっていく新技術もあるようですが、
ほとんどの場合はまだ紙の楽譜。
自分でめくれるように楽譜を上手く編集しなおす方もいらっしゃいますが、
長い曲ではなかなかそうもいきません。
そこで登場するのが「譜めくリスト」と呼ばれる人。
(英語でもPage Turnerと言います。)

ピサロさんのリサイタルの際には
名古屋が誇るベテラン譜めくリスト
(女性なので譜めくリストレス? 譜めくり・ストレスではないですよ!)
本業は中京テレビ事業でコンサートの企画を担当していらっしゃる
上田真由美さんにお願いいたしました。はいこの方!

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今回は終演後、上田さんに
譜めくリストの裏話を聞き出すべく、特別にインタビューをさせていただきました。

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上田さんはこの譜めくりをいつから始めたんですか?

えーと、高校卒業後、音楽事務所でアルバイトを始めて間もなく
上司に「譜めくり手配するの忘れた、あなたやって」と言われたのが最初かなぁ。
もう20数年前・・・テレピアホールで、一体何の演奏会だったかは思い出せないけれど。


おお、では譜めくり歴20数年。しかもいきなりぶっつけデビュー?
それはすごい。初めからいやな質問ですが、
今までで一番困難だった譜めくりってどの演奏会ですか?

実はつい最近、先月電気文化会館であったアレクサンドル・メルニコフのリサイタル・・・。
ショスタコーヴィチの24の前奏曲とフーガ全曲。
シリアスな雰囲気だし、楽譜をそれまで見たことが無かったし
しかもリハーサルなしでぶっつけ本番だった!
楽譜がすこし光沢のある紙で、照明の加減で右のページがほとんど反射して
真っ白に見えるし・・・。死にそうになったよ。


20数年やってきて最近のそれが最も大変だったというのも凄い話ですね。
あの演奏会は私も聴きに伺いましたが、
上田さんが何か人じゃなくて舞台装置の一部のような本当に気配が消えてましたよ。

いや、それは多分私が緊張してロボットみたいになってたからかも。

ほかに過去、印象に残る譜めくりってどういうものがありました?

やっぱりアルゲリッチかなぁ・・・。
その時はネルソン・フレイレとの連弾と2台ピアノのプログラムだったこと。
2台のとき、私は2番ピアノのフレイレさんのほうをめくったけれど、
1番ピアノと2番ピアノが全く別の楽譜になってる曲で・・・。
さらには2台ピアノの2番というのは、普通と逆向きにピアノを置くでしょ。
さらに自分が座る目の前に1番ピアノのおしりの部分がくるから、
1番の音しか聴こえないの!
でもさっき言ったように楽譜は別冊だから
2番の音しか書いていない・・・それは焦ったよ・・・。

キツイですね。1番の譜めくりやっている人とめくるタイミングが
同じと言うこともないんですね?

そうそう、ページの変わり目がもう全く違うから当てにならないんだよー。
でもアルゲリッチの横で聴けるというのは、やっぱり幸せだった。
オーラがもう違うし。


ほかにも凄いオーラを感じてめくるのを忘れそうになったりっていう
演奏会はありましたか?

めくるのを忘れることは無いけれどね(笑)
アシュケナージもすごかった。小柄なおじさんって感じだけど
ピアノを弾くと当たり前だけど凄い。



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ところで、一番気になるところですが
楽譜をめくるタイミングはどうやって計ってるんですか?
やっぱりピアニストによって違うんですよね?

もちろん違うよー。
早めにめくって、と言う人もいればギリギリまで待って、という人もいます。


それはリハーサルのときに確認する?

リハーサル無しでいきなり本番の場合も多いからねー。
ピアニストを良く観察しておいて、楽譜を置いているけれどあまり見てないな、
と言う人の場合は、大抵早めにめくってあげたほうが上手くいく場合が多いかなー。
あとは、フレーズの切れ目なんかは意識しますね。
そのタイミングというか流れは「こうだ」と言葉で説明できないんだけれど・・・
音楽の流れに沿ってめくるってことかなぁ。

おお、それは知らなかった世界です。
譜めくりにも音楽的な要素がある、と。

そう。ほかにも、ちょうどページの終わりに音符がごちゃごちゃたくさんあるようだと
そこは早めにすっとめくるんじゃなくて、音符を読む時間を稼いであげよう、とか。
もちろんさっきのショスタコーヴィチの曲みたいに慣れてないとそこまで出来ないけれど、
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタなんかはしょっちゅうだから、
そういうことにも気を遣うよね。
そしてそれが上手くいくと、めくっていても楽しい!

そこまで行くと本当に職人の技ですね。
そういえば譜めくりに欠かせない道具があるとか・・・

はい、これ。

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これはメクールですね?

はい。これがないと不安です。冬は乾燥するしね。

だいぶ使い込んでますね、これ。縮んでますよ。
ちなみにめくるときは何指?

うーん。(実際にその辺にあったファイルをめくって確かめる・・・)
人差し指にひっかける感じかなぁ。
あと今までに一度だけ
「厳密に角だけをつまんでめくってください」って言われたことがあったよ。
そんなことそれまでに無かったから驚いたよねー。



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気づいたら、時間がずいぶん遅くなってしまってすみません。
最後に、想い出に残る譜めくり体験をもうひとつくらい・・・

そうだねぇ~、ジェシー・ノーマンとフィリップ・モルかなぁ。
ジェシー・ノーマンは本当に後光が差すようだった。
モルさんはいつも名古屋で譜めくりと言えばいつも私をご指名くださったの。
きちっとした方で東京なら誰、大阪なら誰って決められていたみたい。
演奏会もそれはそれは・・・・
アンコールで、客席のお客さんが涙してるのが舞台の私まで伝わってくるんだよね。
こっちもつられて泣きそうになるんだけど、それをこらえてめくるって感じ。


ああー。それ、すごくいいなぁ・・・
そこまでいくともう譜めくリストも演奏者みたいなものですね。

譜めくりは緊張するけどわくわくする。
このピアニストどんな人かなぁとかって。
今日のピサロさんの本番も楽しかったです。
特にアンコールのワルツはご本人も乗ってたし、
私も笑顔になってめくってたかもしれない。
また是非呼んでください!


こちらこそ宜しくお願いします!
今日はありがとうございました。

(スタッフ/にしの)

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