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弓新(Vn)連続インタビュー by 佐藤卓史(Pf)第1回

Categoryインタビュー・取材
3月18日(火)に出演する弓新(ゆみ あらた)さんは、
樫本大進や神尾真由子らを育てたことで知られる名教師
ザハール・ブロンの薫陶を受け、
10代から国際的に活躍する日本ヴァイオリン界のホープ。

数々のヴァイオリニストとデュオを組んできた
ピアニスト佐藤卓史さんが太鼓判を押す逸材です。

今回は佐藤さんによる弓さんへのインタビューをご紹介します。

聞き手:佐藤卓史=2012年6月、チューリヒにて

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1.名教師の秘密


佐藤: チューリヒに来て何年目なの?

弓: 4年目。2008年の8月16日に着きました。

佐藤: もうすぐ丸4年になるわけね。

弓: そうです。最初はチューリヒ市内じゃなくて、
ここから電車でちょっと行ったところの、
キュスナハトの近くのマイレンっていうところに住んでいて。

それこそ、ハイジが住んでいるようなところで、
牛とか、狐とか、そういうのがいっぱいいるところで。

緑の丘があって、牛が自由に草を食べて、
最初の2年間はそういうところに住んでました。

スイスでは18歳にならないと自分で部屋を借りることができないので。

佐藤: へえ。じゃあそのときはホームステイ?

弓: ホームステイ。
掃除したり、洗濯したり、皿洗ったりしながら勉強してました。

佐藤: なるほど。今はひとり暮らし?

弓: ひとり暮らしです。

佐藤: この街はどう? 好き?

弓: 好きですよ。勉強するにはもってこいだと思いますけど、
あんまり楽しみはないですよね。楽しみというか刺激というか。

佐藤: コンサートとかオペラとかあるんでしょ?

弓: テツラフとか、アーノンクールとか、ルガンスキーとか、
気になる演奏家が来たときは行きますけどね。

案外ルツェルンとか、ジュネーヴとかに比べて、いい演奏家来ないんですよ。

佐藤: 確かにそうかもしれんね。

弓: アルゲリッチも一切見たことないし…
僕4年住んでて、クレーメルは一度来たんだけど
ちょうどそのとき僕はいなくて行けなかったんだ。

ツィメルマンもバーゼルに住んでるらしいのに全然来ないし。
そういう面ではチューリヒはちょっと残念なんですよね。

佐藤: なるほどね。

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佐藤: 月並みですが、ヴァイオリンを始めたきっかけなどについて、
教えていただければ。


弓: ヴァイオリンを始めたきっかけは…、
4歳ぐらいのとき僕は大変なあまのじゃくで、
母が「このままじゃ友達ができない」と心配したらしく。

たまたまコープ(生協)仲間のおばちゃんから
「今ヴァイオリンの生徒募集してます」って聞いたんで、
「あ、ヴァイオリンなんかいいかも」と思い、連れて行って。

僕は全く興味を示さず、「新、やる?」と言われて、
適当に受け流してたらやることになっちゃったという。

佐藤: (爆笑)なかなか消極的な理由ですね。

弓: 全然、全然興味なかった。

佐藤: ああそう。お母様は音楽やってらっしゃる?

弓: 全く。楽譜も読めん。
父親は子どもの時にヴァイオリンをやりたかったけど、
やらせてもらえなかったらしくて。

佐藤: ふうん。じゃあご家族には音楽家はいらっしゃらない?

弓: うちの祖母は芸大卒です。

佐藤: ああそうなの! それはお母さんのお母さん?

弓: はい。母の母。歌で。

佐藤: じゃあ僕の大先輩だ。

弓: 祖母は最初僕がヴァイオリンやることに反対してたんですけどね。

佐藤: ええ、なんで?

弓: お金持ちのやる職業だって。

佐藤: それは一理あるかもしれない(笑)

弓: フルサイズ買った時点で
「もうおまえは引き返せない」と言われました(笑)

佐藤: プロになろうと思ったきっかけとかあるの?

弓: いや、みんなが褒めてくれるから
「じゃあやってやろう」というような感じで。そんな程度です。

佐藤: (爆笑)でも、やっぱりヴァイオリンとかピアノは
小さい頃に始めるからさ、
なんとなくずるずると続けちゃう人ってたくさんいるよね。


弓: そうそうそう。

佐藤: 物心ついて「プロになろう!」
とか思った頃に始めたんじゃもう遅いんだよね。


弓: そう、遅い(笑)。
教養の一環として始めて、上手かったから
プロになったって人が多いんじゃないですか。

佐藤: 確かにそうかもね。
インタビューとかでよく聞かれるんだけどさ、
「どういうきっかけで?」って。


弓: 両親が音楽家じゃない人って特別な理由が欲されるんですよね。

佐藤: ああ、そうね。

弓: そうじゃなければ
「両親が音楽家なので僕がやるのは当然でした」
って言えばいいんでしょうけど。

佐藤: それも消極的な理由だよねしかし(笑)。
人は割と消極的な理由から音楽家になる。


佐藤: それから桐朋の音楽教室に入ったんだよね。

弓: これ有名な話なんですけど、
入室試験のときに僕一人だけすごい態度が悪くて。
その当時僕は石ころを集めるのが好きで、
石ころを回しているのが一番楽しかったんですよ。

ヴァイオリンの練習も、終わったら石ころ回していいからやってただけで。

佐藤: え、石ころ回して何が楽しかったの?

弓: なんかコマみたいに回ってるのを見るのが楽しかったんですよ。
今でもきれいな石を見つけると回したくなる。

佐藤: …芸術的な趣味ですね。

弓: 暇人なんですけど(笑)。
で、その石ころを30個ぐらい入室試験に持って行って、
待ち時間にそれを缶の上で…缶を曲げて真ん中に集まるようにして、
2個回してぶつけて楽しむんですよ。

佐藤: ベイゴマみたいな感じ。

弓: そう。そうやって遊んでたと。
で、父親に「新、行くぞ」って言われて、
その石を全部缶の中に入れて「ガシャガシャガシャ!」
ってめちゃめちゃうるさく音立てながら歩いていって、
超部外者な感じだったんです。

音教に入ってからも、先生に対しては最初ひどい態度取ってて、
言うことなんか聞く気はないみたいな感じだったんですけど。

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佐藤: (爆笑)ブロン先生に会ったのはいつ頃?

弓: 確か10歳ですね。音教の先生が、
ブロン先生のところに連れて行きましょうって。

最初は「誰だブロンって?」っていう感じだったんですけど。
実際プロになるつもりもなかったし、全く音楽界のこと知らなくて、
有名なヴァイオリニストって言ったらオイストラフとかハイフェッツぐらい、
今生きている人は全く興味がなくて。

佐藤: はははは。

弓: でもとりあえずよく弾けるから
ブロン先生のところ行ってみようってことになって。
横浜でその当時マスタークラスやってて…

佐藤: ああやってたねえ。

弓: それを見に行って、全然興味なくて。

佐藤: (笑)また。

弓: でまあ、プライヴェートレッスンに連れて行かれて。

最初にブロン先生が言ったのは「何を言って欲しいんですか?
才能があるかどうか見て欲しいんですか?」と。

「まあそういう感じで」って言ったら
「じゃあ弾いてみて」ということで、
モーツァルトのコンチェルトを弾いて。

そしたら彼も適当だから「才能はあります」なんて言っちゃって、
15分でレッスン終わって(笑)。
それが最初の出会いですね。

佐藤: ブロン先生のレッスンはどんな感じなんですか? 
みんな興味あると思うんだけど。


弓: (長考)

佐藤: え、オフレコにならないような発言をしようと思ってます?

弓: (笑)そうですそうです。

佐藤: いやいいよ、あとで編集のときにちゃんとカットするから。

弓: あのねえ、子どもの時はいいと思うんですよ。
何でも言うから。音程とか、指遣い、ボウイング…

佐藤: 細かいってこと?

弓: 超細かい。とにかく細かい。
僕が行った頃はブロン先生まだ50代だったから。

佐藤: あ、そうなんだ。今おいくつ?

弓: 64とか。最近は、ちょっと昔に比べて覇気がないというか、
厳しくないんですよね。攻撃性がなくなった。

佐藤: …あの、もう少し良いことを言って下さいよ(笑)

弓: ええ?

佐藤: 「ブロン先生のレッスンはここが素晴らしい!」とか。

弓: 素晴らしいのは、ホントに細かく、ブロン先生流にコントロールして、
とにかく…音楽の基本文法を教えるみたいな感じ。

佐藤: ああなるほどね。

弓: 指遣いの基本文法、ボウイングの基本文法、どこの弓を使うとか、
そういったことを教えるのは彼の一番得意とするところですね。

佐藤: ははあ。

弓: あとはレガートをとにかく教える。右手のつながり。
つながりに関しては本当にうるさい。

佐藤: この間エリザベートでいろんな人の聴いてたんだけど、
やっぱり大事なのは右手なんだなと思ったね。


弓: そうそうそう。右手のテクニックは、
ブロン先生のところにいればつくってわけじゃないんですけど、
僕はブロン先生を見て非常に学ぶところが多かった。

ブロン先生よりも上手い人がいるってことも最近わかりましたけど。

佐藤: そうか。

弓: それと、ブロン先生の素晴らしいところは、
やっぱり彼のヴィジョンがあることですよ。
彼が聴きたいと思っている音楽がある。

佐藤: なるほどね。

弓: そしてそのヴィジョンを生徒にものすごく伝えようとする。

佐藤: それがやっぱり名教師だって言われる所以なのかね。

弓: そうですね。

佐藤: 普段の、というか、
ヴァイオリンを教えていないときのブロン先生はどういう人なんですか?


弓: とにかく、部屋は常にカオス。
ゴミは捨てられない、家事は全く何もできない、食事はひどい…

佐藤: あっはっはっは。

(つづく)


構成:佐藤卓史

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音楽との出会いは偶然だったにしても、才能を開花させ、
若くしてしっかりとしたプロ意識を持ち世界で活躍する弓さんと佐藤さん。
おふたりの対談はまだまだ続きます。
第2回「弦いろいろ」をお楽しみに!


◆ 3月18日(火)
スイーツタイムコンサート
弓 新(ヴァイオリン)&佐藤卓史(ピアノ)デュオコンサート
13:30開演 13:00開場
自由席 一般¥2,000
弓新&佐藤卓史(表)


(スタッフ/ひび)


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